ハゼットの創業は1868年。今なお有数の刃物メーカーが軒を連ねる北西ドイツのゾーリンゲン地方の鍛冶屋としてスタートした。この歴史が今もハゼットの製品には流れており、素材と加工に関するノウハウをいかした、強靱で耐久性の高い工具を作り続けている。最近は製造中や使用後の環境にまで配慮をし、資源の有効利用、製造工程の簡単化、クロームメッキ処理の簡素化などを推し進め、環境先進国ドイツにありながら、主要製品の国内製造を継続している。

頑固さを感じさせる製品が多いドイツ製工具の中にあって、繊細で柔和な印象をあたえるのがスタビレーの製品。1862年の創業という長い歴史を持つ同社は、1900年代に入る頃はすでに一般産業用を中心に150品目もの工具を製造するメーカーに成長。以後、自動車整備用、航空機用工具の製造にも力をいれ、現在に至っている。独自の工型断面のレンチ類に代表される繊細かつ強靭な構造と、セラミックバレル＋クロームメッキによる独特の質感などが特徴である。

1883年の創業以来、プライヤー類を専門に作り続けるドイツのメーカーである。元々が鍛冶屋だったため、金属の鍛造に関するノウハウが豊富で、さまざまな用途のプライヤーに、それぞれ適切な材料を選び、加工を施して製品化している。プライヤー類しか製造しないにもかかわらずその製品数は膨大で、あらゆる目的、形状のプライヤーがラインナップされている。

スイスに本社を置くＰＢ−バウマン社は、ドライバー類を中心に、六角棒レンチ、タガネ、ポンチ類、ハンマーなど、特定カテゴリーの極めて優秀な製品を作り続けるユニークなメーカーだ。その製品の特徴は、専門メーカーらしく層の厚いドライバー類のラインナップ、加工精度の高さときめ細かな細部の設計、優れた材質と表面処理などである。環境先進国スイスのメーカーらしく、ドライバーのグリップ材質を見直したり、クロームメッキに替えて特殊塗装を施した六角レンチを開発するなど、製造・廃棄工程での環境汚染をなくすべく、新製品の開発を行っている。

高級工具の代名詞として知られる、世界最大の総合ハンドツールメーカー。現代の自動車整備に欠かせないソケットレンチ。その発明者であるアメリカ人のジョー・ジョンソンが、１９２０年、アメリカのミルウォーキーに設立したのがスナップオン社のはじまり。以後、ソケットレンチを主力製品に、バンセールズで販売を拡大。アメリカ国内で８０％近いシュアをもつトップブランドに成長した。

フランスのファコム社は、ヨーロッパ最大の総合工具メーカーである。自動車整備用工具の製造からスタートしたメーカーとは異なり、フランス国鉄が最初の納入先だったという歴史を持つため、自動車整備用のほか、一般産業用、航空機整備用、電子機器用など、膨大な商品点数を誇っている。ファコム製品の特徴は、何といってもそのデザインにある。フランスのエスプリを感じさせる、ユニークで美しく、それでいて使いやすい工具を数多く産み出している。

自動車レースの本場イタリアで創業以来、Ｆ１をはじめとするメジャーなレースに出場するチームをスポンサーとし、ブランドイメージの高揚と現場の声を生かした製品開発を続けてきた。その伝統は製品にも現れており、狭いスペースで、限られた時間に、ミスを犯すことなく確実に作業するのにふさわしい特徴を持っている。薄型で、軽く、しなやかで、滑りにくく、よく目立つ。これらの特徴はいずれも、レースの現場で作業性を高めるのにふさわしいもの。

Ｗｅｒａ社は、ドライバーとドライバービットを専門に製造するドイツのメーカーである。日本に紹介されたのは最近だが、創業は1936年と古く、ドイツはもとよりヨーロッパ各国では、高品質のドライバーのメーカーとして、すでに名声を確立している。製品の特徴としては、何よりもまず理詰めで開発されていること。ドライバーという道具を知り尽くし、考えつくす姿勢が、カムアウト防止策や複合素材のグリップを生み出し、世界的な流行を生んだ。

ベータと並ぶイタリアンブランド、ウザックももた、モータースポーツとのかかわりが深く、２輪や４輪のレースのいろんなカテゴリーでUSAGのロゴマークを見かけることができる。現在、同社はファコムの傘下に入り、グループ企業として、下請け共通化などの変化は見られるが、ブランドとしては独立を守っている。ウザックの製品の特徴は、薄手で軽量なこと、同一製品のサイズのバリエーションが多いこと、電動工具やエアツールが豊富なこと、などである。OEM製品の比率が高いのも特徴といえ、ウザックらしさを感じさせる製品は減りつつある。

静岡県に本社を置く山下工業研究所のブランド名がコーケンである。創業以来一貫してソケットレンチの専門メーカーとして歩み続け、ソケットレンチとその関連製品に膨大な製品バリエーションを持つ。自社ブランドでの販売はもちろんのこと、海外の有名ブランドへのOEM供給も積極的におこなっており、日本国内はもちろん、海外での評価も非常に高い。製品の特徴は、素材の鍛造から最終仕上げまでの一貫した生産体制と、出荷前の全品検査による品質の高さと、専門メーカーならではのバリエーションの豊富さにある。最近はチタンツールやドライバーもラインナップする。

大阪に本社を置く前田金属工業のブランド名がTONE。利根川に由来する名称である。創業は１９３８年で、産業用機械メーカーとしてスタート。以後、一般産業用ハンドツールの製造を経て、総合工具メーカーに発展した。現在でも、ハンドツールの他に、駆動装置、工作機械、油空圧関連機器、工場用各種測定機器などを製造している。TONEのハンドツールの特徴は、ヘビーデューティーであること、シンプルで使いやすい形状であることなど。最近は自動車整備用の高級品であるファインツールシリーズの拡充にも意欲的で、徐々にラインナップを厚くしている。

トヨタ自動車の車載工具の製造からスタートし、創業は１９５０年。京都で創業したため、社名を京都機械工具株式会社とし、京都、機械、工具の３つの頭文字を取って、ブランド名をKTCとした。その後、他の自動車メーカーにも車載工具を納入する一方、自動車整備用工具、特殊工具、一般産業用工具などの製造を経て、総合工具メーカーとして発展。日本のトップブランドとなった。近年はプロフィトツールやネプロスシリーズなど、バリエーションの拡充や高級化にも取り組み、多くのファンを獲得。近年、一般製品のフルモデルチェンジも開始した。

赤いカエデの葉をシンボルマークにするシグネットブランドは、カナダに本社を置くものの、実態は工具メーカーというよりは工具商社に近く、製品のほとんどがカナダ国外のメーカーで製造されたOEMものである。とはいえ、ただ他社製の工具を買い付けて販売しているだけでなく、自社で開発した製品を、製造コストの安い国のメーカーに製造させていると考えればわかりやすい。シグネットの製品には、シャープなライン、鏡面研磨＋クロームメッキの美しいフィニッシュという明確なデザインポリシーが貫かれており、他メーカーにはないユニークな製品が数多い。

バーコ社は、モンキーレンチの発明者自らが設立したスウェーデンのメーカーである。スウェーデン鋼と呼ばれる工具作りに適した素材を元に、１００年以上にわたって蓄積してきたノウハウを注ぎ込み、モンキーレンチとプライヤー類を製造している。バーコのモンキーレンチの特徴は、強度の高さ、優れた加工精度、安全性と能率を考えたきめ細かな設計などであり、いずれをとってもモンキーレンチのトップブランドと呼ぶにふさわしいものである。

１９５６年創立以来、自動車部品と特殊工具の専門メーカーとして、技術と知識を蓄積し、オリジナル商品の開発から製造販売までを一貫して行う。時代に合った新製品の開発を第一に考え、一味違った独自の機構によるアイディア工具を発表。「こいつが外せないんだよ」と言う現場ユーザーの声を求め、同行販売による現場密着型のセールス活動を行う。また、近年では、開発段階での徹底したコスト検討と、製造現場の効率アップに取り組み、現代社会の流れに見合った価格での市場投入ができるよう、少量多品種の特殊工具でありながらも、前向きに取り組む姿勢がうかがえる。コツのいる難作業を、初心者でもベテラン並みに、正確でスピーディーな整備が行える、斬新なアイディアをもりこんだ、特殊ハンドツールの名門。